発酵コラム 13

チョコレートの歴史と発酵

発酵がもたらす特別な香り

チョコレートの原料であるカカオは、紀元前2000年前後にメソアメリカで栽培が始まったと言われています。
アステカ、マヤの時代のチョコレートは甘くなく、水や唐辛子を混ぜたスパイシーなドリンクで、「元気が出る」飲みもの。
カカオは通貨としての価値を持つほど貴重なもので、チョコレートは王族などの特別な人しか飲むことができませんでした。
1500年頃、コロンブスが最後の航海でマヤ族の交易船に遭遇し、大切に扱われるカカオを見て価値の高いものだと思ったようですが、それほど関心を示さなかったのだそう。
ヨーロッパに初めてカカオが渡ったのはスペイン。
アステカ帝国(現在のメキシコ)から聖職者や商人などから伝わったと言われ、薬として飲まれていました。
後に蜂蜜や砂糖を入れて甘くするようになり、その美味しさに高貴な方たちの間で嗜好品として広まっていきます。
スペインはチョコレートの製法を100年もの間門外不出としていましたが、スペインからフランス王ルイ13世に嫁いだアンヌ王女がチョコレートの飲みものをフランスに伝え、ヨーロッパ中に広がっていきました。
チョコレートが現在のような固形になったのは、19世紀半ば。
イギリス人によって考案されました。

チョコレートの原料であるカカオは、アフリカなどの高温多湿の熱帯でしか生育しません。
カカオポッドと呼ばれるラグビーボールのような形をした実に白いカカオ豆が果肉に包まれて入っています。
この果肉ごとカカオ豆を取り出し、木箱の中やバナナの葉の下で発酵させます。
果肉が発酵の際に微生物のエサとなり、豊かに発酵します。
カカオ豆は、発酵することでローストした際にあの美味しいチョコレート特有の香りや風味をもたらし、色も茶色へと変化します。 発酵の後、乾燥を経て出荷されると、いよいよチョコレートになる工程へ。
味わいにとって大切な焙煎は丸いロースターで行われます。
焙煎後、粉砕して皮を除き、すり潰すとカカオバターと呼ばれるカカオ豆の油脂が出てきます。
ごまをすり続けると液状になるのと同じですね。
糖類などの原材料はこの段階で加えます。
液状化したものはざらざらしていますが、コンチングという強い力で練り上げる工程で滑らかにします。
その後、テンパリングと呼ばれる温度調整を行い品質を安定させ、さらに滑らかで艶のある状態にし、冷やし固めればできあがり!

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